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ちゃんと議論しよう

 図書館協議会で図書館の仕事は経験値が物をいうので、有能な図書館員を必要とするなら継続して働ける制度にするべきだという意見を出したことがあります。その際別の委員から仕事は職種に限らず全てそう言うもので図書館だけ特別扱いするのはおかしいと厳しい反論に遭いました。私の説明が不十分だったこともあり、何をそんな青臭いことをといった強い論調に論破され悔しい思いをしました。何が問題だったのかその当時は整理できていませんでしたが今思うと論点を統一することができていなかったからだと思います。

 議論することのメリットはお互いの考えを比較して考えを深めることであって論破することが重要なわけではありません。論点を統一することでお互いの視点が明確になり、意見をやりとりすることで問題点が浮かび上がってきます。そして議論するにあたって議論の立ち位置を明確にすることも重要です。行政の会議は公平性を保つために広く様々な立場の人に参加してもらい社会の実情に合わせようとする工夫がされています。例えば公募の委員を入れるというのもその姿勢の一端です。けれど選出母体の考え方や個人の価値観を会議の場でどう反映していくかはあまり意識されることがないと感じています。自分の意見は意見として会議の場で発言することに比重がいくと価値観の違いからそれぞれの主張は平行線を辿ることになり議論になりません。議論すべきことは何かを意識できるような配慮が主催者側にも会議の参加者にも求められると感じています。例えば最初にあげた図書館員の話なら、上田市の図書館が職員に専門性を求めるのかどうかを明らかにしてもらわないと議論になりません。専門性の実現のための意見と専門性に重きを置かない意見をぶつけること自体が議論の場としては不十分なのだと思います。平行線をたどる話し合いの場が多すぎて価値観が違えば話し合っても分かり合えないと諦めの境地に至ることはとても危険です。多様性を認める方向で社会が動いている以上、議論する際に何を解決しようとして話し合っているのかを意識することが非常に重要なのだと思います。そこさえ整理できれば議論することで解決することがもっと増えます。話し合って解決できないと思い込んで価値観を統一したほうがいいと思わされないようにしたいと考えています。