· 

突きつめると

 図書館に何を求めるのかというのは、利用者だけでなく運営側にも問われている点です。けれど運営側は利用者の図書館に対する評価と図書館法や文科省が提示している基準、あるべき姿を提言している日本図書館協会などの指針との間で揺れ動いていることが多いと感じています。

 税金で賄っているため意識することが少ないですが公共図書館は経営されています。予算との兼ね合いで実現できることと出来ないことの整理をするしかない施設です。あるべき姿を目標とすることは重要ですが、経営という観点が置き去りにされてきたのが現在の公共図書館の混迷だと感じています。公共図書館が直営から管理委託に移行する例が出てきたのは、この矛盾を解決しなかったからだと思います。市民が望む手厚いサービスを行うだけの予算は取れないけれど委託すれば予算を増やさなくとも実現できるというのは単なる時間稼ぎなのだと思います。同じ予算でサービスの質が向上するにはするだけの理由があり目立たないところで直営で支えていたことが削られています。考えなければいけないのは予算を増やすことができなくても何を守っていくのかということです。もちろん予算を増やすだけの理由があれば増やすことにも力を注ぐ必要がありますが、うまくいかない理由を予算が増えないせいにすると問題点が見えなくなると考えています。

 経営というと利益を生み出す印象が強いので図書館と結びつきにくいかもしれませんが、費用対効果もしくは家計簿を考えると分かりやすいと思います。収入に対してどれだけ支出するのがいいのかという考え方が必要なのだと思います。そして税金を投入するだけの理由として求められるのが、どれだけ市民生活に必要なのかということなので、この重い問いの上に公共図書館は存在します。他の市町村でやっているからという理由で、また先進事例を視察して反映しようとしてきた今までの公共図書館のやり方を根本的に見直す時期が来ているのだと思います。上田市にとってどんな図書館が必要なのか、ひいてはどれだけの税金を投入した図書館を求めているのかを考えることが求められていると感じています。