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翻訳 その2

 英語に興味を持つために絵本の原書を読んでみようという作戦はうまくいきませんでしたが、これをきっかけに翻訳されていることを意識するようになりました。幸か不幸かうさこちゃんはシリーズ化されていて作品数が多いので翻訳者が一人ではありません。同一の作品で読み比べることはかないませんが、同じうさこちゃんなので翻訳者のカラーを感じることができます。そんな経験もあり翻訳物の場合 訳者名を意識するようになりました。とは言っても結局英語は苦手なままなので原作に当たってどう訳されているのかを確かめるというより、まるで日本語で書かれたかのような訳が好きです。特に長編になると物語の持つ雰囲気と翻訳者の使う日本語の雰囲気が一致するかで物語の説得力が変わると感じています。

 そして言葉は時代を反映するので翻訳作品は翻訳者を変えて作品に新しい風を吹き込むということが行われます。原書は著作権があるので文体が古臭い印象でも著者以外が書き換えることができませんが、翻訳の場合は言葉の選択といった細部の変更が可能になっています。昨今差別用語などの定義が刻々と変化するのでその対応といった側面もあります。けれど新しい翻訳と以前の古い翻訳と比べてどちらがいいか判断がつかないことが多いのも事実です。作品がまとっている時代の雰囲気がどうしてもあるので翻訳だけ今風にしても座りが悪いこともあると感じています。ただ読み比べる難しさは、最初に読んだものの印象が強くなりがちなので客観的に比較しているのかどうか比べている側も判断がつきにくい点にあります。特にその作品が子ども時代に好きな本だったりすると物語にとっぷり浸り暗記するほど読んでいたりするので単純に比較しにくいと感じています。加えて子どもの本の場合、翻訳がひとつでないことで同一の物語でも選んで読む必要が出てくることが悩ましいと感じています。おとななら読み比べること自体が楽しみになりますが、特に読み始めの子どもの場合選択肢が多いことはプラスに働かないからです。どの翻訳の本で勧めるのか子どもに本を渡す側としては難しい選択を迫られています。