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子どもの読書を支える

 学校司書の方と話をしていると、子どもたちとのやり取りの中で戸惑うことが多いのだと改めて子どもと本の関わりの最前線にいる厳しさを感じます。今までの経験では答えが出ないような事例が年々増えているのだと思います。担任と違って学校中の子どもたちと接する立場なのに子どもたちの個人情報はほとんど共有されない職種なので複雑なのだと想像しています。けれど子どもたちの言動を理解しようとして情報収集をするのはお勧めできないと考えています。学校図書館は本との関わりという一点で子どもたちを見ていいところだと思います。その子の家庭環境や生育の情報をもらっても対処しようがありません。図書館に来て本を借り本を読むことに関してその子が抱えている問題に注目し改善方法を考えた方が現実的です。過去の情報が必要な分野もありますが図書館は現時点がスタート地点です。現時点から未来を作るしかないと考えています。本が選べなかったらその子が選べるようになる方法を考え、読めていないようだったらその子が読める方法を考えるといった個々に対応するのが学校図書館の姿です。大事なのは「その子」という視点です。どの子も同じやり方でうまくいくとは限らないからです。こう書くと学校に何人の子どもたちがいるのかわかっているのかというお叱りを受けそうですが、それでもこの視点は欠かせないのだと思います。そして残念なことにそうやって工夫し手をかけたことは成果として目に見えにくいものです。そのため徒労感に苛まれることも多いことは想像に難くありません。けれどやってもやらなくてもわからないだろうと手を抜くと読書をする人口が減ることは間違いないと思います。今までもこの目に見えにくい努力を、恵まれない労働条件の中で支えてきた司書がいたからこそ、活字離れと言われつつも読書する人たちがいるのだと思います。子どもの読書を支えるという意識を持ち続けられるような環境を整えるにはどうしたらいいのか考え続けています。