· 

ひとり読みにつながる読み聞かせ

 子どもが読書に親しんでいく過程は子どもの数だけ種類があると思っています。そのためこの方法だったら子どもが読書をするという決定打を求めると何をしたらいいのか分からなくなると感じています。これは読書をするための必要条件は一つではなく読書をすることを構成する十分条件がいくつもあるためと考えるとわかりやすいと思います。そしてどの十分条件が子どもにとっての読書する行為につながるのは決まっているものではなく優先順位をつけること自体があまり意味のないことだと思います。それは読書は言葉の習得と深く関わっていますし言葉の習得はこれまた個々の生活と深く関わっているため個体差が大きいためだと考えています。加えて言葉は生活スタイルや個々の価値観と深く結びついていて切り離せず個体差を守るものでもあるからです。大事なのは読書することの必要条件を意識することです。答えがひとつではないことを意識の片隅に置いておくことで結果が違ってくると感じています。

 個体差を優先して選書は個人の選択に任せ介入しないというのは読み始めの子どもにとって不親切な行為だと思います。子どもが読書は楽しいことだと知るには読んで楽しかったと感じる体験が必要だからです。そのため読み始めの子どもたちが実際読む体験を積めるようにサポートするのが読書へ誘うことだと考えています。そんな中で「読み聞かせ」は読み聞かせをする側が様々な目的で取り組んだために読書へ誘う形を取れないという残念な評価になっていると感じています。この評価の理由は「読み聞かせ」は読書するため以外の十分条件にもなるからだと考えています。読書するための十分条件だと考えて「読み聞かせ」に取り組んだ人ばかりではないのです。例えば読書は本の内容を受け取ることだから読めないなら読んであげようという意図で読み聞かせをすれば子どもは読んでもらって完結するので自分で読むという行為につながりません。どんな意図で読み聞かせをするのかで聞いた子どもの反応は変わってきます。そしてこれだけ「読み聞かせ」をする人が増えているのですから読書することへ誘う読み聞かせをしてみる価値はあると考えるようになりました。そのため今年度も上田図書館の図書館講座を3つ受け持っていますが、どれも子どもの読書に焦点を当ててお伝えしています。読み聞かせは自分で読めるようになるためだけのものではありませんが、他の可能性を知った上であえて読書することに特化した内容にしました。興味のある方は聞きにきて欲しいと思います。