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読み比べる

 子どもの本を選書する際の基本は読み比べることだと考えています。子どもの本は似たような内容の本が多いこととベーシックと呼ばれる本の一群があるからです。

 子どもの本はおとなの本のような原作に対するオマージュといった形で似たような内容の本が書かれることは少ないと感じています。作品ですから過去の作品から発想するとか着想され結果内容が似ることはままあることです。けれど子どもの本に関してはおとなの本よりも原作に対する尊敬が重要視されておらず作家によって似た作品を書くことへの意識に温度差があると思います。そのため選書する際に読み比べる必要が出てきます。また児童文学は翻訳作品も多いので同じ作品で翻訳者が違うことも多いため、選書する際に読み比べる必要があると考えています。

 ベーシックに関しては以前も取り上げましたが、子どもの本に関しては時代が評価を通すのかという視点で本を分けて考えると子どもの本の全体像を掴みやすいため使われる考え方です。ベーシックといわれる時代が評価を通した本、これから時代が評価を通すかもしれないと思われる時代が評価を通すであろう予備軍、そして時代を写し今だから楽しい本という3つのグループに分けて子どもの本を見ます。そして3つに分けるにはやはり読んで確かめる必要が出てきます。手間を考えると躊躇しますが、ここに手をかけると図書館が生き返ると考えています。

 このように選書は読み比べることが欠かせないと考えています。学校図書館など子どもの利用する図書館を預かっていらっしゃる方たちにとって選書は悩みの種です。子どもが図書館へ足を運ぶことも仕事の一環として捉えられているからです。そのため選書について教えてほしいといわれることも多いのですが、残念ながらこれさえ知っていれば大丈夫というようなものではありません。効率とは無縁の時間も手間もかかることの積み重ねの先にあるものだと思います。もちろん読んで確かめることは取り組み始めたばかりの人よりも経験を積んだ人の方が本を分ける力がつくものです。目利きになっていくという感じでしょうか。そのためにはまずは3つのグループを意識して読み始めましょう。そして読み始めた人たちが手を繋いでその蓄積を共有しようというのが上田子どもの本研究所のやりたいことのひとつです。一緒に読んでくれる人が一人でも増えるときっとグループ分けが捗るはずと考えています。