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新しい媒体

 偕成社がYouTubeで変わった取り組みをしています。YouTubeの偕成社公式チャンネルの中に♯偕成社おはなしのへやオンラインというカテゴリーがあり読み聞かせの動画がアップされています。その中に作者が読むというシリーズがあり、『へんてこもりにいこうよ』をたかどのさんが読んでいらっしゃいます。これは学校図書館で書写カメラを使った読み聞かせがどう聞こえるかの参考になると感じました。

 この動画を見た第一印象は画面が邪魔だということです。『へんてこもりにいこうよ』は絵本ではないので物語に対して絵が圧倒的に足りません。そのため文字の羅列を見ながら聞く場面があります。文字を見せられるので文字を追おうとすると読み方が早くて追いきれません。かと言って絵がないから見ないでおこうと思っても画像があれば画面から目を離すのは難しいと感じました。また絵と文章が一致していませんから印象的なまるぼの登場もまずまるぼの絵が目に入ってしまうので登場のインパクトが薄くなると感じました。

 反面、たかどのさんの読み方はとても魅力的です。この声でこの雰囲気の作者だからこそ、この世界を作ることができたのだと納得する読み方でした。そのため作者が読むというこの動画のコンセプトとしては役割を十分果たしていると感じます。出版社でなければ到底こんな企画はできないと思いましたし、このシリーズにはエリックカールが読んでいる『はらべこあおむし』などもありとても興味深い取り組みだと思います。

 このことから、書写カメラを使う際に意識すべきことが整理できると思います。それは子どもたちに何を見せているのかを自覚すること、そして見せているものに合わせた読み方をすることです。図らずもこれは一般的な読み聞かせにも通ずるものです。子どもたちが何を見ているのかというのはどんなやり方で読み聞かせをするのかということに関係なく読み手はいつも意識する必要があるのだと改めて思いました。そして書写カメラで文字がよく見えるのなら子どもたちも一緒に読めるような読み方も書写カメラを使うときの読み方のひとつなのかもしれません。