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知ることから始めたい

 私は物語を楽しんで欲しい、読書する仲間を増やしたいという一点だけで子どもたちと関わってきました。そしてこの考えに賛同し一緒に活動してくれる仲間と共に年月を重ねてきました。横のつながりを勧められることもありましたが、自分たちの活動に集中することがささやかでも社会に関わり還元していくことにつながると考えあまり他の団体と交流してきませんでした。そして社会も活気があり次々と新しいことに取り組む人たちを生み出し横につながらなくてもそれを受け入れる土壌があったのでそれで不自由を感じることはありませんでした。

 けれど最近、新しい波が起こりにくくなっていると感じています。自分のことに手一杯で余力がないと感じる人が増えたことと、何か事を起こす際に即効性を求める風潮が強くなってきているからではないかと想像しています。そして責任という言葉が以前より重くすべての人にのしかかっていることも問題です。誰も責任など負えないものにも責任が問われかねない風潮の中、責任が負えるかという視点が必要以上にブレーキとして働いているように思います。そして労働力に対する価値が下がってきている上に自然災害や疫病が流行るといったダメージがじわじわと私たちの生活を脅かし、様々な活動において予算は減ることはあっても増えることはないと無気力な気分になってきています。

 先が見通せないだけでなく明るい未来を想像しにくい状況になっている今、必要なことを整理する時期なのかもしれないと考えています。今までは新しい取り組みを増やしていくことがより快適な生活を生み出し社会を潤すことだと信じてきました。けれどその余力がない今、予算も人材も限られていることをスタート地点にすることからもう一度考えていく必要に迫られているのだと思います。そんなことはとっくに取り組んでいて予算は減らされどんどん苦しい状況になるばかりだと感じている人も多いとは思います。けれど仕事の優先順位をつけないまま、一律に人が減らされたり、雇用体系が変えられたりしてきたことが困窮の原因だと考えています。以前より少ない予算で以前と同じサービス体系が守れると考えてきたことを見直すことから始めるしかないと思っています。そのためには横のつながりが大事だと思います。誰がどこで何をしているのかが意外とわかっていないのだと思います。子どもの読書という一点でも様々なアプローチで様々な活動が行われています。住み分けているからいいやではなく他を知ることで自分のやっていることが客観的に整理でき、優先順位が見えてくるのではないかと考えています。