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子どもの読書の場合

 子どもの本について考え続けていると、読書をどう捉えるかというところに戻ってくる感じがします。読書すること自体が子ども時代の特別な営みではなくその人の生涯に関わるものだからです。そして読書をするかどうかは最終的には個人の判断に任せられている類のものであることは否定しようがないと思います。だからといって読まないのは個人の自由だとおとなと同じ扱いで子どもの読書を捉えるのは違うと考えています。

 子どもの読書の場合、注目しなければいけないのは読む力と本に対する期待感だと考えています。読む力が十分でない場合、往々にして読むことに割く労力と読書した満足感が一致しないことが多いと考えています。読み進めることに力を割き過ぎて内容を楽しめないか、読み進めることは容易でも内容に満足できないという事態に陥りがちなのがひとり読みを始めた子どもたちが抱える問題だと思います。

 読む力をつけるための方策としてMIMのようなアプローチがあったりしますが、読み方に関しては基本的には国語の時間が充てられているのだと思います。そして語彙力という点では普段言葉を使うことで知らずに語彙を増やしているのだと思います。母語の習得が外国語を学ぶ過程と違うのはこの日常的に使っていることが大きいのだと考えています。遊びの中に言葉を使うものが多いのも母語だからこそという要素が大きいと思います。ですから図書館が関わる場合、別段読みのトレーニングとして読書を捉えなくとも良いのではないかと思います。

 そしてもう一点の本に対する期待感は、読んでおもしろかったという経験を積むことでしか身につきません。そのため自分で読む以前から物語の楽しみを体験する方法として読み聞かせやストーリーテリングが機能するのだと思います。物語を楽しんだ経験が自分で読む際の意欲につながるのだと考えています。そして自分で読むにはハードルが高い本でも読んでもらえば十分楽しめるものです。そのため読み聞かせは聞くことで読んだことにするのではなく、本に対する期待感を育むものだと考えています。物語を楽しむ力の方が先に上達するので読む力が追いついてくるまでその差を埋めるものとして考えた方がいいと思っていますし、折に触れて自分で読むことを推奨した方がいいと考えています。そして二つの力の差を埋めることが本に対する期待感を育むことだと考えています。