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ことばのこばこ

 『ことばのこばこ』和田 誠/ 作 瑞雲社 は1981年にすばる書房から初版発行され、1995年に瑞雲社から再刊されました。作者の和田さんは言わずと知れたイラストレーターで子どもの本だけでなく似顔絵から本の装丁やエッセイ、映画監督とその才能は多岐にわたる方です。子どもの本では谷川俊太郎さんとコンビを組んだ作品も多いですが、この『ことばのこばこ』は和田さんのセンスがギュッと詰まり和田さんの感性を垣間見ることができます。

 『ことばのこばこ』は、しりとり、句読点遊び、回文、かぞえうた、なぞかけなど、18種類のことばあそびを、和田さんらしいイラストと手書き文字で楽しむことができます。ことばあそびが「絵」と一緒に楽しめるように工夫され「絵」があることでより一層ことばあそびが楽しくなるようにつくられています。例えば日本語は漢字で表記するため同じ音で違う意味の単語があります。雨と飴 雲と蜘蛛 酒と鮭 芽と目 など絵にすることでこのおもしろさが倍増します。また名詞を二回繰り返すと全然意味の違う擬態語、擬音語になるというのも 絵にすることで意表をつくようなインパクトを子どもたちが楽しみながら受け取ることができます。

 この本は言葉を覚えるというよりは言葉で遊ぶ本です。そのため幼い子どもの本ではなく、ある程度言葉が育ってきた子どもたちからおとなまで楽しめる本だと思います。本はともだち事業でも紹介しますが2年生では楽しみきれないと感じていて、3年生に入ることができた時に紹介してきました。けれど最近3年生でも紹介していてキョトンとする、何がおもしろいのか分からない子が増えてきたと感じています。絵の力をもってしてもおもしろがるほどの語彙力がないのかもしれないと残念な気持ちになりますが、だから尚更このタイプの本の重要性が増すのかもしれないとも思います。そして大型の絵本のこのサイズ感を活かしたのびのびとした絵の配置も読んでいて楽しめます。『ことばのこばこ』を音読することからことばを楽しむことを知るというのも今の子どもたちの言葉との付き合い方なのかもしれないと思いました。