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自分の感性と無縁ではないから

 本を選ぶということ自体自分の感性と無縁ではいられないことだと思います。そのために図書館などで本を選ぶ際、様々な利用者を想定して独りよがりにならないように図書館員は心がけます。けれど独りよがりにならないように心がけることは、一つ間違うと理屈で本を見ることになり判断を鈍らせることにつながります。これを避けるために選書基準と選書会議があるのだと考えています。選ぶこと自体は最後は自分の目を信じることですが、図書館は自分の本棚ではないので公共性を保ちたいという、ともすれば相反することもある価値観を両立するために一人では選ばないのだと考えています。ですからひとり職場である学校図書館の職員は非常に厳しい立場に置かれていると思います。

 上田子どもの本研究所を作りたかったのはこの問題点を解決したかったからでもあります。子どもの読書環境を整えるには蔵書の充実が欠かせません。蔵書の充実というと蔵書数だけが問題にされることが多いですが、本当に大事なのは子どもたちが読む力をつけていくためのサポートとなる蔵書です。基盤となる本がきちんと収蔵されているかを問題にしたいと考えました。そして基盤となる本を洗い出すことは可能だと考えています。もちろんこの本さえあれば大丈夫というようなものではなく、図書館の基盤となり新しい本を見極める際の拠り所となる本というイメージです。そして上田市という同じ財政で運営されている図書館だからこそ可能なことだとも思います。今まで蔵書数を増やし種類を増やすことに比重が置かれていましたが、子どもの本に関しては選び抜いた本という視点が子どもの読書の助けになることに注目していきたいと考えています。手がかかることですが、あえてこの地味な作業から始めることできっと選書がスムーズにいくようになると思います。そしてこの作業もひとりで行うのではなく、この考えに賛同してくれる人たちと手を繋いで取り組んでいくことで上田モデルができるのではないかと思います