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私にとって本の紹介

 同じ本を読んでも本の楽しみ方や心惹かれるところは人によってそれぞれ違います。読書会などではその違いも楽しみの一つだと感じます。そしてなんといっても同じ本が好きということはたとえ初対面の相手さえもまるで旧知の友人のように感じさせてくれます。この息が合う感じはお互いの年齢に関係ない上にその本を楽しんだ年齢に一気に時間が巻き戻る感じがします。ちょうど『いたずらおばあさん』 高楼 方子/作 フレーベル館 に出てくるエラババ先生が発明した一枚着ると一歳若返る服を着るような感じです。好きな本について語り合うことは現実の年齢から離れてどんな相手とも対等に話せる感じになることがおもしろいと思います。

 ですから私が本の紹介をする時は「本が好きな仲間同士」という感覚がいつも働きます。同じ本を読む相手を増やそうと考えていますし紹介した本を読んだら一緒に語り合える相手ができるのが楽しみだと思っています。相手はまだ同じ本が好きになっていないけれど、同じ本が好きな相手と前倒しで話しているのが「本はともだち」事業で私のやっていることなのかもしれません。私の紹介している本は、私が紹介するからこそ子どもたちが読んでみようと思うのだと考えているのはこのためです。好きな本の話をしているのですから、自分で選ぶしかないのです。もちろん読書会と違って紹介した相手に読んでもらうことを視野に入れて選んでいますが、私の紹介する本は私の好きな本であることに変わりはありません。「本はともだち」事業を聞いた先生方から私が楽しそうに話すとよく言われますが、好きな本の話をしているのですから本当に楽しいのです。この感じが本はともだちのエッセンスなのだと考えています。