· 

学校の仕組みを活かす

 学校の魅力は集団で動くことなのだと思います。一人一人に寄り添うことの方が集団を動かすことより大切だと思われがちですが、集団だからこそできることがあります。この辺はプロである教員にお任せするところではありますが、学校図書館はこの集団に対応するということに無縁というわけにはいきません。

 一方図書館は個人に寄り添うところです。利用者主体という個々に合わせて対応することを司書は得意としています。そのため学校図書館で司書という専門性を活かそうとすると個人と集団の板挟みになることがままあります。そして個人を尊重しているようで逆に追い込んでしまうことがあることを自覚する必要があります。

 図書館が利用者主体を貫けるのは利用者の読書履歴を守るという守秘義務の大前提があるからだと考えています。けれど学校図書館では公共図書館ほど守秘義務を守ることを求められませんし守れるものでもありません。学校図書館では個人利用だけでなくクラス単位で利用することも多い上、学び自体も個人で取り組むだけでなくグループで取り組むこともあるからです。ですから学校図書館を利用する子どもたちはおとなが思う以上に周りの目を意識しているのだと思います。 

 ただ公共図書館の利用者のように安心して自分の好みをさらけ出せないことを残念に思い公共図書館のように振る舞って欲しいと思うのは早計だと考えています。自分の好みをさらけ出せない分、周りの目を意識することで自分以外の人の好みや考え方に出会う機会でもあるからです。そしてこれは集団生活を送る意義のひとつでもあります。比べる相手がいたり比べるものがあることで自分を客観的に捉えることができ、どうしたいのかが見えてきます。それは自分を肯定的に捉える要素だけでなく敗北感を感じたりマイナスの感情が生まれることも含まれます。けれど敗北感を感じたところからが本当の出発点なのだと思います。自分の足りないところをどうしたいのかが大事です。そして対処法は多岐に渡り、何にどう取り組むかで自分が変わっていくことを知って欲しいと思います。現時点での評価に留まらず様々な対処法を示し選ばせてあげるのも学校図書館の役割ではないかと考えています。

 個性を尊重するということが比較することを否定的に捉える風潮を加速させていると感じていますが、他の人と自分を比較することは自分の持ち味を知る手段であり、そこからどう考えどう行動していくのかという学びの原動力です。比較したところでおしまいではない学校という枠組みの中にある学校図書館は、学校という仕組みを生かして公共図書館とは違った対応をしていくと、学校図書館の力が発揮できると感じています。