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学校での読み聞かせを考える

 文科省は平成27年12月に取りまとめられた中央教育審議会答申「新しい時代の教育と地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」を踏まえ、学校運営協議会の設置の努力義務化やその役割の充実などを内容とする、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正が行われ、平成29年4月1日より施行されました。それに基づきコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入が全国で始まりました。この学校運営協議会制度の主な役割は「校長が作成する学校運営の基本方針を承認する」「学校運営に関する意見を教育委員会又は校長に述べることができる」「教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができる」というものでその役割は重いものです。そのため長野県は「学校運営参画」「協働活動」「学校評価機能」を一体的・持続的に実施する仕組みを「信州型コミュニティスクール」として構築し、学校と地域住民の協働により、子どもたちの豊かな成長を支えるため、「地域と共にある学校」づくりという形で展開しています。この信州型コミュニティースクールもしくはコミュニテイースクールは国の方針もあり現在長野県下すべての小中学校で導入されています。

 この信州型コミュニティースクールの導入の過程で読み聞かせのボランティアの需要が増え、新しく読み聞かせを始める人が増えました。それ以前も各学校で保護者を中心に読み聞かせのボランティアは存在したのですが、より多くの人にボランティアをして欲しいという信州型コミュニティースクールの方針もあり積極的なボランティアの募集が行われました。たくさんの人が学校に関わることは大切だと思いますが、読み聞かせに関しては学校ボランティア活動の一つとして捉えられたことが現場の混乱を招いたと感じています。学校ボランティアをしたいけれど何をしていいかわからない、絵本なら自分の子どもに読んだことがあるから読み聞かせをしようという形で読み聞かせボランティアが増えたことは子どもたちの読書環境を整えるという点では歓迎すべきことにはならなかったと感じています。集団に対する読み聞かせは絵本の読み聞かせの中でも特殊なものです。本来なら手元で見るはずの絵本を遠くから眺めるという形で集団で共有するのです。自分の子どもに読み聞かせをしたから集団にも読めるかというとまた別物です。そもそも学校ボランティアで行うなら集団でなくてもいいどころか個々への対応も可能です。学校での読み聞かせを集団への読み聞かせだと決めつけたことも、せっかく学校に関わろうとしたボランティアにとって活動がスムーズにいかない原因となったのではないかと想像しています。子どもの読書推進を考えるなら、目的を意識した読み聞かせが導入されていくことが重要だと感じています。同じ読み聞かせでもどこの段階でどの部分に対応するのかを整理し活動していく段階に入ってきたのだと思います。そこでひとり読みにつながる読み聞かせという視点を学校図書館では持って欲しいと考えています。