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目立たないけれど

 新しい取り組みを始める労力は大変なもので、それはそれで爆発的な力が必要だと思います。そして新しい取り組みを始めたほうが仕事をしている感覚を強く得られると思います。それは何もないところに新しいものを作るのですから成果が本人にも他の人にも見えやすいからだと思います。そのため新しいことを始めた方が評価されやすいことも達成感につながります。それに引き換え継続することに対しての評価は高くありません。同じことを同じように繰り返しているということを、与えられたことしかせず仕事を増やさないようにしている受け身の仕事ぶりだと勘違いする人が圧倒的に多いからです。ただ何十年と続けば継続は力なりだという人が出てきます。けれどその継続は力なりに行き着くには同じことを同じように繰り返すことから始めるしかないことはあまり議論されません。

 子どもの読書を考えるときに、この継続が何より大事だと考えています。子どもが読書を楽しむようになるために特効薬など存在しないからです。そのために図書館は子どもたちが自分で読むようになるために本を選び品揃えに心を配り子どもの要求を聞き本を探す手伝いをします。読み聞かせやブックトークなども子どもが自分で本を選べるようになるためのサポートなので、継続してサポートすることが重要でそこだけ取り出して特効薬扱いするのは意味がないと考えています。すべては子どもが読書することへ繋がっているのが図書館の仕事だと考えています。

 特に学校図書館は子どもが読めるようになる過程に寄り添います。学校司書は読み聞かせやブックトークが子どもたちの読書にゆるやかに影響していくことを実感できる立場です。どういう読み聞かせが子どもたちが自分で読むことにつながるのかを感じていくことが大事です。ここで大事なのは年単位のゆるやかな変化を目指すことです。劇的な変化を求めると子ども自身の力で成長していくことができないと感じていますし、読書は自発的な行為なので自分の力で動くことを待つのが重要です。学校図書館の仕事は子どもの成長と深く関わっているので成果が目に見えにくく評価されにくい仕事ですが、焦らずに子どもの成長を見守っていくことが重要です。学校司書は子どもたちが読書することを当たり前のこととして身につけていくサポートをしていることに自信を持って欲しいと感じています。