· 

読み通すことで

 読書を勧める際におとなと子どもでは勧め方が違うと考えています。子ども読書推進を考えたら、本を読むこと自体が楽にできることがまず大前提だと思うからです。おとなの場合は読むこと自体には問題がないので内容に興味を持ってもらうことが読書意欲につながります。ですから新聞や雑誌の書評欄、テレビ番組、書店のポップ、ネットでの口コミ、文学賞などの受賞作など、話題性も読書推進になります。けれど子どもの場合、特に読み始めの子どもたちは内容をおもしろいと思っても読むこと自体が追いつかないと読書が楽しめません。そのため読む力をつけることと並行して読書に誘う必要があります。けれど読書ですから内容も重要で本人がおもしろいと思えなければ読もうという気にならないのと、読めなかったという挫折が本から遠ざかる原因になることもあるため、自分で選ばせるということになりがちなのだと思います。

 けれどこの読み始めの時期に適切なサポートをすることこそ子ども読書推進には重要なことだと捉えています。その時注目しているのは物語としておもしろいと思えるかです。子どもは興味を引く場面があったり挿絵が気になったりするだけではそこだけ見ておしまいになってしまいがちです。そして読書は最初から最後まで読み通すことでおもしろさを受け取ることができる行為だと私は思います。ですから読み通すことに慣れていき活字を追うことが楽しいと感じて欲しいと考えています。読み通すことで物語を物語として丸ごと受け取ることができ、それが読書の楽しさを知ることにつながると思うからです。そのためにサポートする側が、丸ごと受け取って楽しい作品と子どもたちをつなげてあげることが重要です。物語として楽しいかは読んでみないと分からないのでおとなが手を貸す必要があると思います。そして、見た感じはそう惹かれなかったけれど読んでみたらおもしろかったという経験が子どもたちが本を選ぶための土台になっていきます。この手間を省いているために読み応えのある本に親しむ子どもが減っているのではないかと推測しています。

 そして読み通すためにはある程度の負荷がかかります。初めはどうしても自分の意志の力を使ってある程度頑張って読むことが必要になると思います。ただこの負荷がかかり過ぎると途中で諦めてしまうことになりますし、負荷がかからないことを考えすぎると物語として読んでもおもしろくなかったということになります。このさじ加減がサポートする側の腕の見せ所です。そしていけないことに読むことが負担にならずに楽に読めて読んでおもしろかったという体験をさせてくれるかいけつゾロリを筆頭としたプレコミックと言われる漫画に連なる作品が読み始めの子どもたち向けにたくさん出版されています。そのため子ども読書推進を考えるならこのプレコミックとの折り合いをつけなければなりません。先生方の中にも漫画でも読まないよりはマシと考えられる方もいらっしゃいますし、漫画は漫画の楽しさがあり私自身も漫画も好きです。けれど読み始めの子どもたちがプレコミックだけを読み続けると読む力が育たないのも事実です。読み通すことで物語を物語として受け取って楽しかったという経験をいかに混ぜこんでいけるかが大事だと考えています。