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わかるように伝える

 今更改めていうのもおこがましいですが、自分の考えをわかってもらうには相手がわかるように伝えることが大事です。うまく伝わらないときは、伝えようとした内容に問題があることもありますが、相手が理解できるような伝え方ができていないことも多いと感じています。これは伝える相手が子どもであっても同じだと考えています。そして子どもに伝えるほうがより正確に相手の状況を見定める必要があるのだと思います。けれど意外と伝え方ではなく、内容自体を見直してしまうことが多いように思います。本の紹介などはその際たる例で紹介した本を子どもたちが読もうとしないのは、本の内容が子どもたちに向かなかったと思いがちですが、紹介の内容が子どもたちに伝わらなかったということもあると思います。

 そしてこの感覚は言葉の選択と関わっていると感じています。あえて子どもたちが親しんでいる言葉を選択すると内容が伝わりやすいと体験的に思います。わかってもらうように伝えるためにはどちらかのフィールドに引き込むのではなく、お互いが相手のフィールドを感じつつ共存できる位置を見つけることかもしれません。例えばゲームに親しんでいる子にアイテムという言葉を使うと驚くほど伝わることがあります。魔法の杖をこの杖は魔法が使えるアイテムと言った方がうまく伝わるのです。本の中で使われている言葉をそのまま使うことは紹介している側のフィールドに引き込むことだと感じています。そして正確な方が作品を尊重していると思われる方もいらっしゃると思います。けれど本の紹介はその本を読んでみようかなと思ってもらうことが大事ですから、あえて書いてある通りに言わなくてもいいこともあると考えています。そして子どもが自分で読むことで魔法の杖という言葉が蓄えられていくので、そこは子どもに任せてもいいのだと思います。ここが正確に言葉を使うことで言葉の習得を目指す国語の授業とは違う点だと捉えています。本は自分で読んでこそ血肉になります。どんなに正確に言葉を伝えても読まなければ力になりません。だからこそわかるように伝えることを意識したいと考えています。