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複合施設と図書館

 人口減少に伴い、国は各地方自治体に公共施設の整理見直しを求めています。今まで増えることはあっても減ることのなかった公共施設がこれからは整理統合され適正な数に整備されていくことになります。そんな流れの中、新しく建設される公共施設は複合施設が望ましいとされています。公共施設の数も減らせるし、何より施設の稼働率が上がり無駄が減らせる合理的な案として推奨されています。その流れに図書館だけが逆らえるわけもなく、今後建て替えが検討される際には複合施設の中に図書館が組み込まれるであろうことは想像に難くありません。

 これから上田市で建て替えを検討しなければならない図書館は上田図書館です。合併に伴う諸事情もあり上田市の図書館は本館分館という組織構造を作ることができませんでした。そのため並列でどの図書館も対等であることを優先した図書館整備が行われました。けれど本館分館という言い方をしないだけで一番規模が大きい上田図書館が本館的な業務を請け負うことでバランスをとってきています。本館と呼んでいないのでピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんがよりによって一番規模が大きい本館の役割を担っている図書館が複合施設になるというのは、上田市の図書館を考える時に図書館が図書館として存続できるのかという問題を突きつけられることになると思います。建設される施設の規模には限界があり複合施設は多機能を持たせるために図書館に十分なスペースを確保することが難しいからです。おまけに現在図書館は滞在型の図書館が支持され全国的に見ても新規に開館する図書館はほぼ滞在型の図書館となっています。滞在型の図書館の特徴は開架率が高く広々としたスペースをとり閲覧スペースも従来型の机と椅子のセットだけではなくソファー等の寛げる場所を随所に配置したものが多いため、それに倣った作りにすると余計に本館的な動きを持たせることが難しくなります。本館は普段は目立たなくとも、いざという時に欲しい資料に利用者がたどり着けるための施設でもあると考えています。そうでなくとも資料は増え続けるもので断捨離といった考え方とは相容れないところがあり図書館は常にスペースとの戦いをしています。もちろん公共施設ですから利用者である市民が図書館に何を求めるかが重要です。けれど図書館がどういうことができる施設なのかの十分な情報が市民にもたらされているとは思えません。知った上での選択なら市民も合意の上の選択になりますが、知らずに新しさや居心地の良さだけを見ての判断だとしたら取り返しがつかないことになります。図書館が何ができるところなのかをどう発信していくか早急に考えていく時期だと思います。