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図書館に何を求めるか

 図書館は利用者の求めに応じて様々なサービスを展開してきました。図書館法で定められている内容が多岐に渡ることもありどこの館もやったことのないことに挑戦することが図書館法が定められて以降の公共図書館のあり方だったようにも思えます。そして図書館法が戦後間もない時期に定められたこともあり法律の文面には本に限らずに美術品の収蔵や映画上映なども言及されています。そこから当時の図書館が文化の拠点として期待されていたことが伺えます。けれど地方都市でも美術館や映画館といった施設が持てるようになりましたし、市民が集うための施設も複数持てるようになっています。

 そんな中で図書館でなければできないことはなんだろうと思うことが増えました。特に滞在型を謳う図書館が増えてくるにつれて長時間図書館で過ごすメリットはどこにあるのだろうと思います。滞在型の図書館として評価の高いところは新築されていることを差し引いても長時間いられるように座り心地の良い家具を用意し、飽きないように本以外の楽しみを工夫し、飲食できるスペースを作り、見た目もお洒落で素敵な空間がつくられています。そういった図書館では企業を誘致しカフェや知育玩具などの体験コーナーなど図書館とは別体制で運営されるものが含まれることもあります。こういった例を見ると日本はある意味豊かになったのだと思います。こういった変化をすることで今まで図書館を使っていなかった人たちが図書館に足を運んでくれるのかもしれないとは思います。

 けれど上田市という豊かな財政基盤を持っているとは言い難い地方都市の住民として感じるのは滞在型の図書館は財政的負担が重いということです。職員や図書費を削られる心配もない財政状況なら滞在型の素敵な図書館も魅力的で心惹かれます。けれど滞在型の図書館は建物の魅力で集客はできるかもしれませんが新しさも魅力の一つです。公共施設は40年は使用するものですから費用対効果が悪すぎると感じます。私たちは新しく図書館を建てることが目標になった時期をすぎ、複数の図書館を持てるようになりました。図書館を建てることが目標だった頃に比べて図書館に求めるものが曖昧になってきているのではないかと考えています。今持っていないものばかりに目がいってしまうと持っているものまで危うくなるのが図書館かもしれないと感じています。