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聞いて受け取る経験

 ひょんなことからある団体の事務局を引き受けています。私は集団で動くより個人で動く方が動きやすいと感じるタイプなので、こういう役割は初めての経験です。面識のなかったもの同士の集団に連絡事項を伝えたり会議をしたりというのは思ったより興味深いものでした。組織に属したことがほとんどないせいかもしれませんが、話の伝わり方がこれほど違うとは予想していませんでした。子どもと付き合うことが多かった私は今まで話の内容が十分伝わらないのは子どもの集中力の問題だと考えていました。集中力が続かなかったり気が散りやすかったりするので大事なことを聞き落としたりするのだと思っていたのです。けれど集中力という点では問題のないおとなの集団でも大事なことを聞き落とす人がいます。もちろん伝え方に問題があったり使った言葉のニュアンスが聞き手の感覚に合わなかったりということもあるのだとは思います。けれど観察していると同世代のおとなの場合でもうまく伝わらない人の特徴は気が散るタイプのようです。気が散ると言っても子どものように全く別のことを考えるという形ではなく、話の中で疑問が浮かんだり気になることがあるとそこに囚われてその後の話を聞いていないことに気がつきました。会話と違ってまとめて話を聞くというのは聞き続けることが最優先で考え事をするとその先が聞こえなくなるという特徴があります。おとなも実はまとまった分量の話を聞いて理解する経験が学生時代を含め減っているのではないかと思います。全部聞いて全体から考えるには意外とまとめて聞く訓練が必要なので聞く経験がものをいうのかもしれません。

 そして今小学校ではハンディキャップを持つ子どもたちが増えていることもあり、わかるようにという配慮から細かく分けて箇条書きのような指示が増えています。また長文を避け噛み砕いた形での説明が増えていると感じています。こう言った配慮と並行してまとまった分量を聞く経験がないと結局話が通じないことになりそうです。そう考えるとストーリーテリングや朗読は子どもたちの耳を育てることになると感じています。