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求められる力

 この時期クリスマスの絵本を探していらっしゃる方が増えます。図書館でもクリスマスの本のコーナーを作ったり展示をしたりと工夫が凝らされています。昨日も図書館で顔なじみのお母さんにクリスマスの絵本をお勧めしようとしたのですが目当ての絵本を見つけることができませんでした。検索機を使えばいいと思いましたがタイトルも作者も正確に思い出せなかったので司書の方に助けてもらいました。そして私の記憶のかけらからタイトルと作者に行き着き無事目当ての本を見つけて手渡すことができました。

 それにしても人間の記憶は曖昧なもので微妙にタイトルなどが記憶と違っていて自分でも笑ってしまいました。探していたのは長尾玲子さんの絵本でした。長尾玲子さんは刺繍絵本作家で全て刺繍で物語が描かれていて、その刺繍の雰囲気がクリスマスを題材とした話にとても合っていて好きな作家さんなのです。ですから刺繍で描かれた絵本ということと、クリスマスの話ということ、そしてサイズが小さく正方形でシリーズで3冊セットになっているということ、出版社は福音館ということはすらすらと言えたのですが、作者名と題名が出てきませんでした。辛うじてその一冊がクリスマスケーキの話で確か101こめのクリスマスケーキだったようなと言ったのですが出てきません。そこでクリスマスの話じゃないもので確か雑草の本があったことを思い出しましたがそれもヒットしません。結局この曖昧な情報からでも司書の方が見つけ出してくださったのですが、タイトルは101こめのではなく『100こめのクリスマス・ケーキ』でした。雑草の本も『ざっそうの名前』でしたし、検索機では手に負えなかっただろうなあと思いました。

 自宅に帰ってからパソコンで刺繍絵本で検索してみると簡単に長尾玲子さんの作品がヒットしました。検索機ではなくネットの方がこういった曖昧な情報から絞り込むのが得意なのだと実感しました。そしてスマホを使いこなしている人はこんな時その場でスマホも併用するのだろうということに思い至りました。子どもの本に関しては、もしかしたらこれからは探し出す手法ではなく、勧めたい作品を提示できることの方が専門性として求められていくのかもしれないと思った出来事でした。