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要求の変化に対応する その1

 利用者主体で利用者の求める本を提示できるのが司書だと教えられてきました。そのために貸し出し冊数や来館者数が重要視されてきました。そして新規の利用者の開拓や要望にそえる品揃えへの心配りをしようとする際も蔵書数を増やすことや話題の本をいかに早く揃えるかといったことで対処しそれが図書館の仕事だと捉えられてきたのだと思います。

 けれど豊富な品揃えによって選択肢が増えることや話題の本を揃えることを以前ほど求められていないと感じるようになりました。本屋さんと比較されて図書館は本を探し辛いと言われることが増えてきたのはこの表れだと感じています。本屋さんのように分かりやすく身近な言葉でカテゴリー分けしてあったらいいのになどと言われますが問題の本質は選択肢がありすぎて利用者が選べないことなのではないかと思います。実際子どもの本についての図書館講座をしていると本が選べないという質問をよくもらいます。本に限らず何を選んだらいいのかわからないというのは、情報や物が溢れている中で暮らす現代人の悩みの一つです。物がない時代を思えば贅沢な悩みにも見えますが当事者にとってみれば切実です。そこを踏まえると本屋さんのようにと希望される理由は本屋さんの本の並べ方や見せ方には一本芯が通っているからだと思います。言い方を変えると売るための工夫が凝らされているのです。売りたい本は目立つように平積みにされポップが躍りこの本を買っておけば間違いないという本屋さんの後押しが随所に散りばめられています。

 だからといって選択肢が多いことが強みだと考えている図書館では今月の借りて欲しい本などという本屋さんのようなやり方はできません。せめてテーマを決めて展示をしたりしていますが、図書館のやり方だと絞り込みをせずにできるだけテーマに該当する本全てを並べるような形になり選びやすいとは感じてもらえないのでしょう。この図書館のおもしろさがわからないなんてと思ってきましたが、利用者の要望に沿った図書館のやり方を工夫することも必要なのかもしれないと思うようになりました。