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要求の変化に対応する その2

 図書館はそもそも本を選ぶことを楽しむ場でもあったのだと思います。利用者が自分が何を読みたいのか、何を知りたいのかと向き合うことに快感を覚えることがあってこそ図書館の力が十分に発揮されるのだと思います。利用者がそれぞれたくさんの本を自分の目で見ることで自分に必要な一冊に出会う過程を図書館が担ってきたと感じています。所蔵する本を全開架で収蔵しようという発想もこの考え方から来ていると思います。けれど不特定多数の人に寄り添うには膨大な蔵書が必要になり、それを開架で収蔵するには広大な場所が必要となる上 目的の本がある場所にたどり着くために地図を片手に歩かなければならないといった別の不具合が出ます。そして今の図書館でも本を選ぶことが苦痛だと感じる人たちが出てきているのです。情報が溢れ何がいいのかわからないと感じる人が増え選ぶことより手っ取り早く読むべき本を手にしたいという要望は選ぶ楽しみを知って欲しい図書館のあり方と相容れません。滞在型の図書館が増えているのは手っ取り早くという要望をなだめ、のんびり本と向き合うのはいかがですかという提案でもあろうかと思います。けれどこれは図書館を新築するとかリフォームするといった大掛かりな取り組みになります。またこのやり方が長期的に見たらどういう結果をもたらすのかは、滞在型の図書館ができ始めたばかりでまだ見えてきていません。

 そこで今すぐできることとして、図書館員が利用者に自分の感想を伝えるのはどうだろうと考えています。利用者主体を掲げているのに、このやり方では利用者の希望に添うことに反すると感じるかもしれませんが、本が選べないという利用者への対応として検討する余地があると思います。特に子どもの本は親が子どもの代わりに選ぶことが多いので図書館員が手渡していくことに適していると思います。イメージとしてはポップの口頭版です。ちょっとした一言とともに本を手渡し利用者に読んで判断してもらうことは図書館という本を貸し出している施設だからこそ成り立つことのように思います。ただこれには図書館員の力量が必要です。手渡すといっても相手があることなのでなんでも思いついた本でいいという訳には行かず、相手の希望するジャンルや内容などある程度の制限がかかります。そのため普段から実際に読んでいないと手渡す本を思いつけないからです。子どもの本はもともと読んで確かめることが必要だと考えているので試してみたいと考えています。