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みんな同じではないけれど

 子どもに本を勧める時に自分が何を手がかりにしているのかと考えると、読み始めの頃の自分の体験かもしれないと思います。子ども時代に自分で読んだ時の記憶がその本を見ると呼び覚まされるので、子ども時代に読んだことのない本もその感覚と照らし合わせていることがあるからです。もちろんどの子どもにも応用が効くものだと思っている訳ではありませんが、多かれ少なかれ読み始めは似ているのではないかと紹介してきた経験から思います。ですから私の選書はかなり感覚的な部分が反映しているような気がします。感覚的なものを言語化するのは私にとって難易度が高く核心が掴めそうで掴めない感じなのです。説明しようとすると同じところをぐるぐる回っているようなもどかしさを感じています。

 ただ絵本作家でも自分の子ども時代の感覚を思い出す事ができ、それが絵本に反映されるタイプと自分の子ども時代の感覚とは関係なく絵本を作るタイプの作家がいます。思い出せるかどうかは絵本を作れるかどうかには関係ありません。同じように子どもに本を勧める時に自分の子ども時代の読書を思い出せなければ本が選べない訳ではありません。ただ子どもがどう読むのかを知ることは本を選ぶ助けになります。ですからなんとか言葉にしようとしているのですが、なかなかうまく行きません。

 今の段階で説明できるのは、読み始めの子どもたちの読み方には特徴があるということです。読み始めの子どもたちにとって活字を追って内容を受け取ることはおとなが思うよりエネルギーを必要とする事です。ですからおとなの読書のように行間を読み取ったり空想を膨らませたりということをおとなが思うよりしていないのだと思います。読み始めの子どもたちにとっては物語の展開こそが大事で、しかも説得力のある展開が必要なのだと思います。読み進めることにエネルギーが必要な状態でも読み進められるのは展開に興味が持てるからではないかと考えています。ですから次どうなるのだろうという事が読み始めの子どもたちにとって重要な事だと思います。