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ひとり読みができるために

 ひとり読みを始める時に必要なことは物語を物語として受け取ることができるかどうかではないかと思います。自分の子どもにたっぷり読み聞かせをしたのに、読書するようにならなかったという声を聞く事があります。けれど親子の読み聞かせは絵本を読んでもらう時間も含めて楽しみとして子どもたちは捉えていると考えています。読み聞かせをしてもらう時に親が自分に集中している感じが子どもの快感につながっている部分があるからです。親子の読み聞かせは、読んでもらう事でスキンシップに近い満足感が得られるので、それがファーストブックが推奨される所以だと思います。そして読んでもらうことで絵本の世界での出来事を親がどう感じているのかまで含めて子どもたちは受け取っています。親は子どもにとって何を好み何を良しとするのかの手本となる最初の相手だからです。ですから親子の読み聞かせでは親は自分の感性を全開にして読む事で親も子も満足感が得られます。けれどこれは物語を物語として受け取っているのではなく、物語をどう解釈するのかという親の通訳がついたものを受け取っているのです。そのためたくさん読んでもらっていても自力で物語を受け取れるようにならない例が出てくるのだと思います。物語を物語として受け取るには誰の介助もなしにひとりで受け取る必要があり自分の意志で物語の展開についていかなければなりません。これが読書です。誰の影響も受けずに自分と物語で向き合うことができなければ読み進める事ができません。

 そしてクラス単位で行う集団の読み聞かせは活字を追わずに物語を物語として受け取る経験の場として最適だと考えています。親子での読み聞かせの延長線上の通訳的な読み聞かせではなく、物語を物語として受け取る読み聞かせやストーリーテリングがもっと広まればひとり読みを始める子どもたちのサポートになると思います。辞書を片手に読まなければならない時もありますが、わからない単語があっても推測しながら読み進める事も大事なのだと思います。物語を物語として受け取ることは展開についていく事であり、わからないことを見つけることではないということを読み手も聞き手もわかっている必要があります。この違いは知識として覚えることではなく、体験していくことで身に付くことなので、集団の読み聞かせやストーリーテリングをたっぷりすることに活路があると考えています。