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クラス単位の醍醐味

 本はともだち事業も各校ほぼあと一回を残すところになってきました。全6回のうち5回目ともなると、子どもたちはこの時間が何を自分たちにもたらすのかが体感的にわかってきます。そのため紹介された本を積極的に読むという感じから徐々に紹介された本を読む事が当たり前になっていきます。とは言っても本はともだちのルールがうまく浸透せずに「全員が全冊読んで完成する」と言われていても自分がその全員に含まれていることを自覚できない子が出ることもあります。本はともだちの時間では前回紹介した本6冊に共通しているテーマを聞くために、一冊づつ紹介した本のタイトルを言って好きだと思った本に手をあげてということを毎回しています。その際に「読んでない」と声を上げる子が出るのです。けれど回数を重ねるうちに徐々にその声は少なくなっていきます。

 私が口にしているのは「本はともだちは私がしゃべったところまでで半分」と「全員が全冊読んで完成」と「一緒に本はともだち作ってくれますか」の3点です。そして「読んでない」という声に対しては「じゃあまだの人は読んでおいてね」と「読んだ本の中でって聞いているよ」の2点です。ただこれは毎回必ず伝えています。そしてクラス単位でやっているためにこの私の言葉がけは集団としての理解を深める作用を生みます。具体的には紹介された本を回す際によくわかっていない子にわかっている子が注意したり、担任の先生が指導してくれたりするのです。同じことを何回も言われることに対してそんなことわかっているという不満にならないのは、自分ひとりの問題ではないからです。ここがクラス単位で展開する醍醐味だと思います。

 そして大事なのは待つことだと感じています。ぱっと反応できることやすぐ効果が目に見えることの方が伝えている方は手応えを感じます。けれど子どもたちと関わる際には変化していくことを信じて待つことが重要だと考えています。そしてひとりより集団の方が影響しあって効果が持続します。集団で過ごすことはいろいろな軋轢が生まれることですが、捨てがたい効果も生まれます。学校の問題点ばかりが取り上げられる昨今ですが、目に見えるような形で子どもたちの変化が感じられるのは集団で取り組んでいるからだと思います。