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お金で評価される難しさ

 職を得るということは賃金が発生することです。生きていくために労働することは欠かせません。けれど賃金が発生するということは労働力がお金で評価されていくともいえます。働く側からしたら、同じ働くなら賃金が高い方がいいに決まっています。そして効率よくお金を稼ぐことを目指す形になっていくのは当然の結果だと思います。最近ネットニュースなどで目にする「億り人」という言葉なども資産を築くことを目指す人が多いことを表していると感じています。

 けれど賃金が発生しない労働も私たちの生活を支えています。その代表的なものは家事労働です。衣食住を整えるのは意外と手がかかるものですが、それには賃金は発生しません。もちろん暮らしていたらどうしても必要なものですから代わりにやってもらうわけではなく、自分でやるのだから労働とはいえないという意見もあるかと思います。けれど家事はハウスクリーニングなどの仕事として請け負う場合があるものです。綺麗事に聞こえるかもしれませんが大事なのはお金にならないことを軽んじないことだと考えています。仕事の重要性をお金で評価すると生活のバランスが崩れ人としての営みに不具合が出るような気がしています。残念ながら仕事の重要性と労働力に対する対価は比例していないと思うからです。またコロナ禍により一気に命がけの現場になった病院などをみても、平時とコロナ禍では同じ賃金ではやっていられないと思う人が出ても不思議はありません。お金で評価すること自体が難しいことをコロナ禍で目の当たりにした感じがしています。

 億り人に憧れますし、お金がなければできないこともたくさんあります。お金が解決してくれることもあるでしょう。ただそれと同時にお金にならなくても大事なことを忘れてはいけないと思います。ミヒャエル・エンデの『モモ』は時間を問題にしていましたが、取り扱い方を間違えるとお金でも同じようなことが起こりかねないと思います。